1. はじめに
このマニュアルは、小規模プールの衛生管理を徹底し、子どもの健康と安全を守るためのガイドラインです。全職員が共通理解を持ち、適切な対応を行うことを目的としています。
2. シーズン前の準備
役割分担の確認
- 施設管理担当:プールの維持管理、プール本体の破損確認、シャワーや塩素測定器の点検
- 水質チェック担当:水質検査と塩素濃度の確認、残留塩素濃度の測定、水質の定期検査
- 監視担当:子どもの安全監視、溺れや怪我の防止
- 緊急時の連絡担当:緊急時の対応と連絡、心肺蘇生の実施、119番通報と保護者への連絡
(ここに役割分担を説明する図を配置)
設備の確認
- プール本体の破損確認
- プールの底や側面に破損や亀裂がないか確認します。
- プールの底や側面に破損や亀裂がないか確認します。
- シャワーの正常動作確認
- シャワーが正常に作動するかを確認します。
- シャワーが正常に作動するかを確認します。
- 塩素測定器の正常動作確認
- 塩素測定器が正常に作動するか確認します。
水温と水質の確認
- 水温
- 水遊びに適した水温は26℃~31℃です。定期的に水温を確認します。
- 水質
- 水質検査を行い、濁りや異物がないか確認します。必要に応じて水替えや清掃を行います。
塩素消毒
- 塩素剤の準備
- 残留塩素濃度が0.4~1.0mg/Lに保たれるように、適切に塩素剤を追加します。
緊急対応の準備
【重要事項】
これまで、溺れた人の背中側から抱きかかえて両腕でお腹を圧迫し、水を吐かせる処置が推奨されたこともありました。しかし、これは固形物に対する処置であり、液体に対しては効果がありません。むしろ誤嚥を誘発し、心肺蘇生が遅れる危険があります。そのため、現在はこの方法は推奨されていません。
<乳幼児が溺れたときの対処手順>
- 溺れている子どもを一刻も早く引き上げる
- 子どもを水やお湯から素早く引き上げます。
- 平らな場所に寝かせる
- 引き上げた子どもを平らな場所に仰向けに寝かせます。
- 意識の確認
- 子どもの意識があるかを確認します。
- 呼びかけや軽い刺激に反応するかを確認します。
- 人を呼ぶ
- 意識がない場合、周囲に助けを求めます。
- すぐに119番に通報し、救急車を呼びます。
- 心肺蘇生を開始
- 意識がない場合は、ただちに心肺蘇生(CPR)を開始します。
- 胸骨圧迫:胸の中央に手を置き、強く速く圧迫します(1分間に100~120回のリズムで、深さは約5cm)。
- 人工呼吸:胸骨圧迫30回ごとに、口対口で2回の人工呼吸を行います(気道を確保し、鼻をつまんで行う)。
【注意事項】
- 胸骨圧迫と人工呼吸を絶え間なく続け、救急隊が到着するまで行います。
- 胸骨圧迫が難しい場合や人工呼吸に抵抗がある場合は、胸骨圧迫のみを続けます。
3. 水遊び前のチェック
子どもの体調確認
- 体調チェック
- 発熱や下痢がないか、目、鼻、耳、皮膚の状態を確認します。
トイレの利用
- トイレの利用
- 水遊び前に全員がトイレを済ませます。
体の洗浄
- 体の洗浄
- シャワーで体を洗い、汗やほこりを落とします。頭から足まで、お尻もしっかり洗います。
- お尻は、塩素剤が入った水に10秒ほど浸ける。
4. 遊泳中の管理
塩素濃度の管理
- 塩素濃度の確認
- 遊離残留塩素濃度が0.4~1.0mg/Lの範囲内であることを確認します。濃度が低下した場合は塩素剤を追加します。
【プールの水質基準】
水質基準項目 | 基準 | 測定濃度 |
水素イオン濃度(ph) | 5.8~8.6 | 毎月1回以上 |
濃度 | 2度以下 | 毎月1回以上 |
過マンガン酸カリウム消費量 | 12mg以下 | 毎月1回以上 |
遊離残留塩素濃度 | 0.4mg/L以上 | 毎時1回以上(小規模プールは10分おき程度) |
大腸菌 | 検出されないこと | 毎月1回以上 |
一般細菌 | 200CFU/mL以下 | 毎月1回以上 |
【消毒薬の濃度管理が重要】
・微生物(細菌・ウイルス)は目で見えない。
・こどもは、大人に比べ感染症に罹患しやすい。
↓
遊離残留塩素濃度0.4mg/L以上(1.0mg/L以下が望ましい)になるように定期的(約10分おき)に測定、確認する。
【プール水の消毒薬の種類】
種類 | 商品名(例) |
塩素化イソシアヌール酸(錠剤・顆粒)有効塩素含有量60~90%程度 | ハイライトエースネオクロール |
次亜塩素酸カルシウム(錠剤・顆粒)有効塩素含有量70%程度 | ハイクロントヨクロン |
次亜塩素酸ナトリウム(液体)有効塩素含有量5~10%程度 | ピューラックスツルクロン |
【塩素剤の必要量の計算方法】
塩素剤の必要量(gまたはmL)は、以下の式を用いて計算できます:
【プール水量の計算】
プールの形状に応じた水量の計算方法は以下の通りです:
<円形のプール>
円形のプールの場合、水量は以下の式で計算します:
水量(m³)=半径(m)×半径(m)×3.14×水深(m)
<四角形のプール>
四角形のプールの場合、水量は以下の式で計算します:
水量(m³)=縦(m)×横(m)×水深(m)
【具体例】
<円形のプール>
例えば、半径が3メートル、水深が1.5メートルの円形プールの場合:
水量(m³)=3×3×3.14×1.5=42.39 m³
<四角形のプール>
例えば、縦が10メートル、横が5メートル、水深が2メートルの四角形プールの場合:
水量(m³)=10×5×2=100 m³
【塩素剤の必要量の計算】
例えば、上記の円形プール(42.39 m³)で、目標塩素濃度が1.5 mg/L、現状塩素濃度が0.5 mg/L、使用する塩素剤の有効塩素濃度が10%の場合:
この計算式を用いることで、プールの水量と塩素濃度に応じて適切な塩素剤の量を簡単に計算することができます。
<一覧表の例>
【体調確認】
- 体調不良の早期発見
- 遊泳者の体調を定期的に確認し、体調が悪い場合は水遊びを中止します。
【監視】
- 全体の監視
- 溺れている子どもがいないか、ケガをしている子どもがいないか、不自然な動きをしている子どもがいないかを監視します。
【熱中症対策】
<熱中症の症状>
重症度 I
- めまい、たちくらみがある
- 筋肉がこむら返りを起こす
- 拭いても汗が出てくる
重症度 II
- 頭がガンガンするような痛みがある
- 吐き気がする、または実際に吐く
- 体がだるく、倦怠感が強い
- 虚脱感がある
重症度 III
- 意識がない
- 体が痙攣する
- 体温が非常に高い
- 呼びかけに対して返事がおかしい
- まっすぐに歩けない、または走れない
<熱中症の原因>
環境要因
- 気温・湿度が高い場合:特に風が弱いときは、体温調節が難しくなり、熱中症のリスクが高まります。
- 急に暑くなった日:身体が暑さに慣れていないと、体温調整が追いつかず、熱中症になりやすいです。
- 日差しが強い場合:直射日光を長時間浴びると、体温が急上昇し、熱中症のリスクが高まります。
身体要因
- 脱水状態や低栄養状態:下痢などで体内の水分や栄養が不足している場合、体温調節が難しくなり、熱中症のリスクが高まります。
- 体調不良:寝不足や体調不良があると、体の調整機能が低下し、熱中症のリスクが高まります。
行動要因
- 激しい運動や慣れない運動:普段行わない激しい運動をすると、体温が急激に上昇し、熱中症のリスクが高まります。
- 水分補給ができない状況:適切な水分補給ができないと、脱水状態になりやすく、熱中症のリスクが高まります。
<熱中症予防>
- 水分補給
こまめに水分補給を行い、めまい、頭痛、吐き気などの兆候を確認します。 - 日陰を利用する
5. 水遊び後の対応
プールの水抜きと清掃
- 水抜き
- プールの水を抜き、異物がないか確認しながら清掃します。
体の洗浄
- 体の洗浄
- 頭から足先までしっかりと洗い、うがい、手洗いを行います。
遊泳者の体調確認
- 体調確認
- ケガ、発熱、目の充血などがないか確認します。
タオルやハンカチの管理
- タオルやハンカチの共用を避ける
- 共用を避け、各自のものを使用します。
記録の作成
- プール使用時の状況記録
- 使用時の時間、天候、気温、水温、人数、遊離残留塩素濃度と使用した塩素剤の量、遊泳者の体調、その他特記事項を記録します。
6. 参考資料
7. 記録シート
- プール使用記録シート
- 日付、時間、天候、気温、水温、残留塩素濃度、使用した塩素剤の量、遊泳者の人数、体調の確認結果、特記事項を記入するシート