第1章: はじめに
<目的>
このマニュアルは、中規模保育園に新任された看護師の方々が、日々の業務を円滑に進めるためのガイドとして作成しました。
保育園における看護業務は、子どもたちの健康管理や応急処置、保護者対応、感染症対策など多岐にわたります。
このマニュアルを活用することで、実務経験に基づいた具体的なアドバイスや最新の医療ガイドラインに沿った対応方法を習得し、保育園での業務をスムーズに遂行できることを目指します。
<対象読者>
このマニュアルは、新任の保育園看護師を対象としています。これから保育園での看護業務を開始する方や、すでに勤務しているものの、さらなる知識とスキルの向上を目指す方に向けた内容です。
第2章: 保育園の概要
<保育園の規模と特徴>
中規模保育園は、幼児数が50~100名程度の保育施設を指します。このマニュアルで取り上げる保育園は、約70名の幼児が在籍する中規模保育園です。中規模保育園は、大規模保育園と比べてアットホームな雰囲気を持ち、子どもたち一人ひとりに対してよりきめ細かい対応が可能です。その一方で、スタッフ数が限られているため、一人ひとりの役割と責任が大きくなります。
<保育園看護師の役割>
保育園看護師の主な役割は、子どもたちの健康管理と安全確保です。
具体的には、以下のような業務を担当します。
- 健康診断: 年間を通じて定期的に健康診断を実施し、子どもたちの健康状態を把握します。
- 応急処置: けがや急病時に適切な応急処置を行い、必要に応じて医療機関へ連絡します。
- 保護者対応: 子どもたちの健康状態について保護者に報告し、必要な助言や対応を行います。
- 感染症対策: 保育園内での感染症予防策を徹底し、感染症が発生した際には迅速に対応します。
- 保健指導: 子どもたちに対して健康教育を行い、日常生活の中での健康管理を指導します。
第3章: 健康診断の実施
<年間計画>
健康診断は、子どもたちの健康状態を定期的に確認するために重要な業務です。年間計画を立て、スムーズに実施することが求められます。
以下に、年間健康診断のスケジュール例を示します。
- 4月: 新年度の健康診断
- プール前:耳鼻科・眼科健診
- 9月: 内科健診
- 秋頃:歯科健診
- 毎月: o歳児健診、身体測定
(日本小児保健協会より頭囲・胸囲測定は、エビデンスに乏しいため測定しなくても良いと通知あり)
健康診断の準備には、以下の項目が含まれます。
- 健康診断の日程調整
- 健康診断の通知を配布
- 物品の準備(体温計、身長計、体重計など)
- 診断結果の記録用紙とデータ管理システムの確認
<健康診断の実施手順>
健康診断の具体的な手順を以下に示します。
- 準備
- 診断に必要な道具と資料を揃える
- 診断場所を清潔に保つ
- 子どもたちに事前に健康診断の内容を説明する
- 実施
- 身長と体重の測定: 正確に測定し、記録する
- 眼科: 会場設営・物品の準備・Drの補助・記録など
※眼科検診前に視力検査表を使用し、視力を確認する。 - 耳鼻科健診: 会場設営・物品の準備・Drの補助・記録など
- 歯科検診: 会場設営・物品の準備・Drの補助・記録など
※歯科衛生士が来る場合は、記録不要。 - 内科検診: 医師による全身チェック(心音、呼吸音、腹部の触診など)。
会場設営・物品の準備・Drの補助・記録など
- 記録と報告
- 各検査結果を記録用紙に正確に記入する
- 必要なフォローアップが必要な子どもについて、保護者に連絡する
<結果の共有とフォローアップ>
健康診断の結果は、保護者と共有し、必要に応じてフォローアップを行います。
- 結果の通知
- 健康診断結果を記載した報告書を作成し、保護者に配布する
- 結果に異常が見られた場合は、個別に説明を行う
- フォローアップ
- 再検査や医療機関での受診が必要な場合、保護者にその旨を伝える
- 定期的に健康状態を観察し、必要に応じて適切な指導を行う
第4章: 応急処置
<応急処置の基本原則>
保育園での応急処置は、子どもたちの安全を確保するために非常に重要です。
応急処置を行う際の基本原則を以下に示します。
- 安全確認
- 事故現場の安全を確認し、自分と周囲の子どもたちの安全を確保する
- 必要に応じて、危険物を除去する
- 初期対応
- けがや病気の状況を迅速に評価し、適切な対応を決定する
- 必要な応急処置キットを準備する
- 連絡
- 緊急時には、すぐに医療機関や保護者に連絡する
- 事態が深刻な場合は、救急車を呼ぶ
<具体的な応急処置の手順>
具体的な応急処置の手順を以下に示します。
- 軽傷の処置
- 擦り傷や切り傷: 傷口を水道水で洗浄し、絆創膏を貼る
- 打撲や捻挫: 冷やして安静にし、腫れが引かない場合は医療機関を受診する
- 中等症の処置
- やけど: 冷水で冷やし、必要に応じて医療機関を受診する
- 鼻血: 鼻を冷やし、血が出ている鼻孔を指でつまみ下を向く。10分間続けても止まらない場合は、医療機関を受診する。
- 重症の処置
- 意識不明: 呼吸と脈拍を確認し、必要に応じて心肺蘇生(CPR)を行う
- 骨折: けがをした部位を固定し、動かさないようにして医療機関を受診する
<ドキュメンテーション>
応急処置を行った際には、以下の情報を正確に記録し、報告書を作成します。
- 事故発生時刻と場所
- 子どもの状態
- 行った応急処置の内容
- その後の対応(医療機関への搬送、保護者への連絡など)
第5章: 与薬管理
<与薬について>
・基本的に保育園で薬の与薬は行っていないため、病院にかかる場合には、保育園に通っていることを伝えたうえで、処方の回数を朝と夕の1日2回に変更できないかなど、担当医に相談してもらいます。
やむを得ず薬を持参される場合は、担任または看護師に相談の上、下記の要綱を必ず守ってもらいます。
*病院の処方による薬で、今までに投与したことがあり、異常がなかった薬のみ可能
*薬情報提供書を必ず添付
*1カ月に1回は受診し、投薬量や投薬方法等に関する変更点の有無の確認
*「与薬依頼書」「主治医意見書」「処方薬」は必ず職員に手渡し
<薬の管理>
・内服薬以外は、毎週金曜日に返却
・内服薬は、毎日1日分の薬を持参してもらいます。
・主治医意見書:薬を預かる時(初回のみ)
与薬依頼書:毎週月曜日
※詳しくは別紙「与薬について」をお読み下さい。
<ワセリン>
・保育園では、ひどく乾燥し傷になっている場合にのみ、応急処置という意味でワセリンを塗ります。冬場の肌が乾燥しやすい時期には、家庭で保湿クリームを塗ってきてもらいます。
・使用する場合は、全園児を対象に毎年4月、同意書(皮膚保護物品使用に関しての同意書)を取ります。
<解熱剤>
・解熱剤は熱を下げるための薬であり、病気を治すものではないので、解熱剤を使用しての登園は控えてもらいます。
・保育園での使用も不可。
<虫よけ・ムヒ>
・虫よけパッチ、虫よけリングは使用不可となります。(剥がれ落ちたときに、小さいお子様が飲み込んでしまう恐れがあるため)
・保育園で虫除けやムヒを使用する場合は、全園児を対象に毎年4月、同意書(皮膚保護物品使用に関しての同意書)を取ります。
・ムヒと虫除けは、基本的に家庭で塗ってきてもらいます。
<ホクナリンテープ>
・ホクナリンテープを保育園に貼ってくる際には、テープに記名をし、必ず担任に伝えてもらいます。
(剥がれた際には、連絡帳に貼って返却します。)
第6章: 保護者対応
<コミュニケーションの基本>
保育園看護師として、保護者とのコミュニケーションは非常に重要です。効果的なコミュニケーションは信頼関係を築く基礎となり、クレーム対応や子どもの健康管理においても役立ちます。
- 傾聴
- 保護者の話に耳を傾け、理解を示す姿勢を持つ
- 相手の言葉を繰り返すことで理解を確認し、共感を示す
- 明確な説明
- 専門用語は避け、わかりやすい言葉で説明する
- 困難な問題については、具体例や視覚資料を用いる
- タイムリーな連絡
- 子どもの健康状態や緊急事態について、迅速に保護者に連絡する
- 定期的な報告を行い、保護者が安心できるよう努める
<具体的な対応事例>
- 健康診断結果の共有
- 定期的な健康診断の結果を保護者に報告し、必要なフォローアップを説明する
- 結果に異常が見られる場合は、具体的な対策や医療機関の受診を推奨する
- 日常の健康管理
- 日常のけがや病気について、どのような対処を行ったかを保護者に説明する
- 予防接種や定期健診についての情報提供を行う
- クレーム対応
- 保護者からのクレームには誠実に対応し、問題の原因を迅速に調査する
- 解決策を提示し、再発防止策を説明する
<トラブルシューティング>
- 保護者の不安解消
- 子どもの健康状態や保育園の対応について不安を抱える保護者に対して、丁寧に説明し、理解を促す
- 必要に応じて、専門家の意見を取り入れたアドバイスを行う
- コミュニケーションの行き違い
- 保護者とのコミュニケーションにおける誤解や行き違いが発生した場合、早急に対処し、正しい情報を提供する
- 定期的な面談や連絡帳を活用し、継続的なコミュニケーションを図る
第7章: 感染症対策
<基本的な感染症対策>
保育園における感染症対策は、子どもたちの健康を守るために欠かせません。
以下に基本的な感染症対策を示します。
- 手洗い・うがい
- 子どもたちに正しい手洗い、うがいの方法を教え、実践させる
- 石鹸と流水で少なくとも20秒間手を洗う
- 消毒
- 玩具や設備の定期的な消毒を徹底する
- アルコール消毒液を使用し、共用部分の清掃を行う
<感染症発生時の対応>
感染症が発生した際の具体的な対応手順を以下に示します。
- 早期発見
- 子どもたちの体調を日々観察し、異常が見られた場合は迅速に対応する
- 発熱や咳、下痢などの症状が見られた場合、直ちに保護者に連絡する
- 隔離
- 感染が疑われる子どもを他の子どもたちから隔離し、静かな場所で休ませる
- 必要に応じて、保護者に早期の引き取りを依頼する
- 情報提供
- 感染症の発生について、感染症ボードを玄関先に掲示し、保護者やスタッフに速やかに情報を提供する
- 保健所や医療機関と連携し、適切な対策を講じる
<定期的なチェックと教育>
- 感染症対策を継続的に実施するために、定期的なチェックとスタッフ教育が重要です。
- 定期的な健康チェックリスト
- 日常的に使用する健康チェックリストを作成し、毎朝の健康状態を確認する
- 異常が見られた場合は、直ちに対応する
- スタッフ教育と訓練
- 定期的にスタッフ向けの感染症対策に関する教育を実施する
- 実際のケースを用いた訓練を行い、対応力を向上させる
第8章: 保健指導
<保健指導の計画>
保健指導は、子どもたちが健康な生活習慣を身につけるために重要です。年間を通じて計画的に保健指導を行うことで、子どもたちの健康意識を高めます。
【0歳】
- 9月: 手洗いの習慣を身につける(日々の生活の中で担任が行う)
【1歳】
- 5月: 手洗いの習慣を身につける(日々の生活の中で担任が行う)
- 1月: 手洗い(看護師が実施)
【2歳】
【3歳】
- 6月: お尻の拭き方
- 11月: 鼻のかみ方
- 12月: 咳エチケット、手洗い
- 2月: 歯磨き指導
【4歳】
- 5月: 食と体の話(食品群)
- 6月: お尻の拭き方
- 9月: 歯磨き指導
- 12月: 咳エチケット、手洗い
- 1月: からだのなまえ、うんちの話
【5歳】
- 4~3月: 自ら考え行動できる(丈夫な体つくり・健康に過ごすためには)
- 5月: 目と耳の話(耳鼻・眼科健診前)
- 7月: からだの機能
- 9月: 骨の話
- 10月: 脳の話
- 12月: 咳エチケット、手洗い
【職員に向けて】
- 4月: 嘔吐処理・アレルギー児の対応について(エピペン)
- 5月: 熱性痙攣の対応
- 6月: 応急救護(AED)
- 9月: 嘔吐処理(再指導)
- 11月: 熱性痙攣の対応(再指導)
- 1月: AED(再指導)
<指導方法と効果的な実施>
効果的な保健指導を行うためのアプローチと具体的な実施方法を以下に示します。
- 子どもたちへのアプローチ方法
- 楽しく学べるように、ゲームや歌を取り入れる
- 絵本、イラスト、パネルシアターを使用して、視覚的に理解しやすい内容にする
- 保護者参加型の保健指導
- 保護者会で情報を発信し、家庭での健康管理について情報を共有する
- 保護者からの質問や相談に対応し、具体的なアドバイスを提供する
- 評価とフィードバック
- 保健指導の成果を評価し、必要に応じて内容や方法を見直す
- 子どもたちや保護者からのフィードバックを収集し、今後の指導に活かす
第9章: 業務負担の管理
<時間管理と優先順位の設定>
保育園看護師としての業務を効率的にこなすためには、時間管理と優先順位の設定が不可欠です。以下に具体的な方法を示します。
- 効果的な時間管理のテクニック
- タスクリストの作成: 毎日の業務をリスト化し、重要度と緊急度に応じて優先順位をつける
- タイムブロッキング: 一日の時間をブロックに分けて、特定の業務に集中する時間を確保する
- 優先順位をつける方法
- 緊急度と重要度: 業務を緊急度と重要度に基づいて4つのカテゴリに分類し、優先的に対応する項目を決定する
- デリゲーション(委任): 他のスタッフに任せられる業務は適切に委任し、自分の負担を軽減する
<ストレス管理とメンタルヘルス>
保育園看護師の仕事はストレスが多く、メンタルヘルスの維持が重要です。
以下にストレス管理の方法とメンタルヘルスケアのポイントを示します。
- ストレスの兆候と対策
- ストレスの兆候: 疲労感、イライラ、不眠、集中力の低下などの兆候に注意する
- 対策: 定期的な休息、リラクゼーション法(深呼吸、瞑想など)、適度な運動
- メンタルヘルスの維持方法
- サポートシステムの構築: 同僚や上司、家族とのコミュニケーションを密にし、サポートを受ける
- 自己ケアの時間を確保: 趣味やリラックスできる活動に時間を使い、心の健康を保つ
第10章: 最新の医療ガイドラインと規制
<日本国内の保育園向け規制>
保育園看護師として、最新の医療ガイドラインと規制に従うことが求められます。
以下に主要な規制とガイドラインを示します。
- 関連法規と規制の概要
- 児童福祉法: 保育園での健康管理に関する基本的な規定
- 感染症法: 保育園における感染症対策のガイドライン
- 守るべき医療ガイドライン
- 日本小児科学会ガイドライン: 子どもの健康管理に関する最新の医療ガイドライン
- 厚生労働省の指針: 保育園での感染症対策や健康診断の実施に関する指針
<最新の医療情報の取得方法>
最新の医療情報を継続的に取得し、実務に反映させる方法を以下に示します。
- 情報源と定期的な更新方法
- 専門誌や学会: 小児看護に関する専門誌や学会の発行物を定期的にチェックする
- オンラインリソース: 厚生労働省や日本小児科学会のウェブサイトから最新情報を取得する
- 継続教育
- 研修やセミナー: 定期的に研修やセミナーに参加し、新しい知識や技術を学ぶ
- 資格の更新: 必要に応じて資格を更新し、最新の知識を身につける
第11章: まとめ
このマニュアルでは、保育園看護師としての基本的な業務内容と具体的な実践方法について解説しました。重要なポイントを再度確認し、日々の業務に活かしてください。
<今後の展望と自己研鑽>
保育園看護師としての成長は、子どもたちの健康と安全に直結します。常に自己研鑽を続け、最新の情報を取り入れてください。
- 自己研鑽の方法
- 継続的な学習と実践
- 専門家とのネットワーキング
- キャリアパス
- 将来的には、管理職や専門職としてのキャリアを目指すことも考慮してください